ゆとりちよだNEWS

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N様からのご投稿 2017/06/12

会員様からのご投稿 6月号

 関東地方が梅雨入りし、空を見上げるとうつうつとした気分になってしまいます。うつうつとするのには訳があって、先日街を歩いていたらこんなことがありました。小さなリュックを背負った小学校4・5年生くらいの少年とレジ袋を持った父親らしい50歳前後とおもわれる男とすれ違いました。「きょうはお母さんの誕生日だから・・・」。少年の声が聞こえます。ふ~ん、なにか贈り物でもするのかな。そして、驚愕の言葉が少年の口から出ました。「お前なんかに・・・」。えっ!? 男は父親ぢゃないのか。まさか実の父親をお前呼ばわりするとはおもえない。足を止めてふたりの会話に聞き耳を立てます。すると、「殴ってやろうか」と男の声。何!おい、本気かよ。こんな小さな子供に大の大人が手を出すなんて。殴るそぶりを見せたら止めに入ろう。身構えます。が、なにごともなくふたりは去ってゆきました。少年、男、母親。三者の関係は想像がつく。「ライオンの子殺し」が思い浮かぶ。あのとき、あとをつけて住まいを確認し「行政」に知らせるべきだったのか。すれ違ったときの少年の華奢な躰と蒼白く痩せた顔が忘れられない。と、うつうつとしておりましたら、ゆとりちよだ147号が届きましたよ。さあて、今月号にはうつうつを吹き飛ばす明るい情報は載っておるのでありましょうか。

 まずご紹介するのは上野の国立西洋美術館で開催される「アルチンボルド展」であります。「シュールレアリスムの父」ともいわれる、16世紀後半ハプスブルグ家の宮廷画家だったアルチンボルド。アルチンボルドの名は知らなくてもその作品をご覧になれば、ああこの画家かと思い出されることでしょう。たとえば、連作「四季」の「春」。一見したところ高貴な女性の横顔を描いたかのように見えます。が、し・か・し。仔細に観ると春の花で埋め尽くされているのです。髪飾りはユリ、目は?、鼻は?、口はバラの蕾、耳は?、イヤリングはスミレか(「?」は花の名がわからんのデス)。80種といわれる花の集合体!すでに私たちは歌川国芳の寄せ絵を体験していますが(ゆとりちよだ81号)、アルチンボルドはさらに複雑緻密です。そして、「上下絵」なんて代物もありますよ。ボールに盛ったダイコン、タマネギ、ニンニク、シイタケなど野菜を描いた静物画。ところが、これを上下ひっくり返すと・・・なんと、庭師の肖像画になっちゃうんです。ほかにも、「司書」なるけったいな絵もあります。人物がすべて本に関係するモノで描かれているのです。開いた本で頭部、カギの輪で目、本の閉じヒモで耳、ホコリを払うはたきでひげ、しおりで指という具合に本尽くし。みなさま。日常でありながら非日常。たまにはだまし絵の世界で遊んでみませんか。

 私たちは過去にボストン美術館所蔵の吉備大臣入唐絵巻(きびだいじんにっとうえまき)や平治物語絵巻 三条殿夜討巻を観てきました(ゆとりちよだ84号)。そのボストン美術館からまたまた名品がやってきます。上野の東京都美術館で開催される「ボストン美術館の至宝展 東西の名品、珠玉のコレクション」です。今回の目玉はゴッホの描いた郵便配達人ルーラン氏とルーラン夫人の絵がふたりそろって日本で公開されることのようですが、ここでは注目すべきほかの作品をご紹介しましょう。

陳容(南宋) 九龍図巻
 龍図を得意とした南宋の文人画家・陳容の龍。10m近い長大な画巻に黒雲に乗り波濤にたゆたう九匹の龍を見てきたように描いています。

徽宗(北宋)五色鸚鵡図巻
 亡国の文人皇帝として知られる徽宗描く鸚鵡です。花鳥画に才を発揮した風流天子は「痩金体」と呼ばれる線の細い独特の書体を創始したことで知られていますが、賛も痩金体です。

曽我蕭白(1764年) 風仙図屏風 六曲一隻
 「奇想の画家」曽我蕭白です。左隻には大きく渦巻く黒雲。右隻には剣を持った男(仙人か)が対峙しています。これから一体なにが起こるのでしょうか。ハラハラドキドキ、手に汗握るシーンです。

英一蝶(1713年) 涅槃図
 高さ約2.9m、幅約1.7mの巨大な画面に釈迦入滅の様子を描いています。北枕で横たわる釈迦。周りでは菩薩、羅漢、動物たちが嘆き悲しんでいます。傷みが激しく解体修理されていた涅槃図。絵師・一蝶の大作がようやく里帰りします。これは必見でしょう。

 夏休みが近いとあって子ども向けの企画が多いですね。新宿三丁目の新宿文化センター大ホールには「キラキラ☆プリキュアアラモードドリームステージ」が登場します。「つくって たべて たたかって」をテーマにして5人の少女たちが活躍する東映アニメがミュージカルになりました。スイーツのお土産がつくようなので、甘いもの好きな子どもたちにゃタマランでしょう。アンデルセンの童話「人魚姫」がミュージカルになって三越前の三越劇場で上演されます。「2017年 三越夏休みファミリー劇場 ミュージカル『人魚姫』」です。愛する王子のために海の泡となる人魚姫。アンデルセンの童話を劇団東少がどう料理するのでしょうか。タノシミですね。大手町の日経ホールでは影絵劇が上演されます。劇団角笛の「角笛シルエット劇場」は大人もたのしめる影絵劇として定評がありますが、第54回公演の出し物は、ご存知、新美南吉の名作童話「ごんぎつね」、童謡ファンタジー「つのぶえのうた」、誰もが知ってる童話「赤ずきん」です。影絵とゆうと白いバックで黒く切り抜いた人形の芝居をイメージしますが、これはカラーの影絵。さすが、ゆとりちよだ。ミュージカル、影絵とバラエティ豊かな企画を考えてくれました。みなさま。今年の夏はお子さんといっしょに劇場に足をお運びになりませんか。

 今月号も魅力満載、ゆとりちよだ。アキバのみなさまには神田のジョニー・デップがお持ちしました。おタノシミに。