ゆとりちよだNEWS

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N様からのご投稿 2017/11/15

会員様からのご投稿 11月号

ゆとりちよだNEWS 152号

年賀はがきが売り出されると、今年ももうすぐおしまいか、正月なんだと、毎年のことながらあたふたしてしまいます。そういえば、旧知のひとりが来年からは年始のご挨拶ははがきではなくメールで送りますとゆう年賀はがきが届いたのが数年前。以来、メールでやりとりしていますが、なにか味気ないですね。絵手紙や版画、直筆の年賀のご挨拶をいただくと、その人の風貌、話し方など諸々が懐かしく脳裏に浮かんできます。と、いただいた今年の年賀状を眺めていましたらゆとりちよだ152号が届きましたよ。さぁて、今月号にはどんなたのしい情報が載っておるんでありましょうか。

今では死語になっているかもしれませんが「煙管(きせる)」なる隠語がありました。運賃をごまかす乗車のことです。例えば入場券で入り定期券で出る。すると、その中間の区間は無賃乗車となります。で、なぜそれを煙管とゆうのか。煙管は、刻み煙草を詰める雁首(がんくび)と煙を吸う吸い口、このふたつをつなぐ羅宇(らお)と呼ばれる竹の筒でできています。雁首と吸い口は金属製であるため、煙の入口と出口では金を使うがその間は金を使わないことから、中間区間を無賃乗車することを「煙管」と呼ぶようになったワケです。入場券も定期券も磁気化された現在ではこんな不正はできなくなっちゃいましたね。ところで。これに近い、やはり隠語で「薩摩守(さつまのかみ)」があります。平家の公達・平忠度(たいらのただのり)の官名が薩摩守であったことから、忠度=ただ乗り=無賃乗車のことを薩摩守とゆうようになりました。そんな具合に揶揄される平忠度ですが、平家物語では文武に秀でた武将として描かれているんであります。さて。マクラが長くなりましたが、千駄ヶ谷の国立能楽堂の「国立能楽堂1月定例公演」では「能 忠度」が演じられます。一の谷で討ち死にした忠度は優れた歌人でもありました。師・藤原俊成は勅撰和歌集の千載集に忠度の歌を(忠度が朝敵であったため)「詠み人知らず」として入れたのです。可哀想な忠度。能では忠度の亡霊がわが名を入れてほしいと、俊成に仕えていた旅の僧に懇願する話になっています。そんな忠度の歌への執心を描いた夢幻能。能とは縁のない生活を送っていらっしゃるみなさま。一生に一度くらいは能をたのしんでみませんか。野村萬斎が鬼を演じる「狂言 鬼の継子(おにのままこ)」も同時上演されますよ。

この夏、私たちは寓意的な肖像画で知られるアルチンボルドの作品を数多く上野で体験しましたが、今度は渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムにやってきます。「神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展」です。中国の北宋末期の皇帝・徽宗(きそう)は芸術・文化を愛した風流天子でしたが政治的には無能であったために国を亡ぼすことになってしまいました。同じような人物が500年ほどのちのヨーロッパ、神聖ローマ帝国に現われます。皇帝ルドルフ2世です。宗教戦争である三十年戦争の遠因をつくった皇帝なのですが、文化面では多くの芸術家や学者を帝都プラハに呼びよせそのパトロンとなった教養人でもありました。アルチンボルドも招かれたひとり。67種類の花・野菜・果物で描いた皇帝ルドルフ2世像が展示されます。別の画家の描いた写実的な下ぶくれのルドルフ2世像と比べるとどこが似とるんかいなとおもってしまいますが、皇帝はおおいに気に入ったそうですので相当に懐の深い趣味人だったんですね。ほかにも、ついこの間日本にやってきたバベルの塔で知られるピーテル・ブリューゲルの息子ヤン・ブリューゲル(父)の「陶製の花瓶に生けられた小さな花束」も展示されます。が、ちっとも小さくありません。小さいのは花瓶だけです。何十種類なのか美しい花々と虫たち、さらに指輪、金貨などが細かく描きこまれています。また、惑星は楕円軌道を描いて太陽の周りを回っているとゆう「ケプラーの法則」のあのケプラーもルドルフ2世の御用学者として宮廷に抱えられ、天文学を発展させたんですから皇帝の知識欲には底知れぬものを感じます。アストロラーベと呼ばれる天体観測器が展示されるそうですよ。さあて、この冬は渋谷で「驚異の部屋」と称される畸人皇帝のコレクションに触れてみましょうか。

ほかにも、六本木のサントリー美術館では「六本木開館10周年記念展 フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年」が開催されます。16世紀から17世紀にかけて中国の肌理の細かい硬質な磁器(のちには日本の磁器)はヨーロッパを席巻しました。その中国磁器を模倣してドイツではマイセン、フランスではセーヴルで磁器製品が製作されることになります。ヨーロッパ最高峰の磁器のひとつであるセーヴル磁器。その300年の創造の軌跡を六本木でたどってみませんか。同じ六本木の森アーツセンターギャラリーでは「THE ドラえもん展 TOKYO2017」が開催されます。「あなたのドラえもんをつくってください」。この要望に国内外の28組の作家たちが応えました。様々な発想や技法で生み出されるドラえもん作品を観ることができるそうですよ。セーヴル磁器の魅惑の世界を味わったらドラえもんの宇宙で遊びましょうか。

今月号も魅力満載、「ゆとりちよだ」。岩本のみなさまにはベテラン山上さんがお持ちしました。おタノシミに。