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N様からのご投稿 2018/04/10
会員様からのご投稿 4月号
ゆとりちよだNEWS157号
例年になく早く咲いた東京のソメイヨシノはもう葉桜。近くの公園ではヤエザクラが満開です。今年は咲き始めから好天がつづき目いっぱい桜をたのしむことができましたね。行く春を惜しみながらも青葉若葉の季節の到来に胸がワクワクします。日本が1年でイチバン清々しく爽やかな空気に包まれる時ですから。と、夢見る少女のように胸ときめかしておりましたらゆとりちよだ157号が届きましたよ。さぁて、今月号にはどんなたのしい情報が載っておるんでありましょうか。
「あつもり」と聞いてなにを思い浮かべますか。蕎麦の熱盛?悪くないですね。寒い日なんかにいただくのは。でも、ここでご紹介するのは蕎麦ではなく能の「敦盛」なんです。平成30年度6月国立能楽堂定例公演「粟田口 敦盛」。千駄ヶ谷の国立能楽堂で演じられます。ここンところ、ゆとりちよだでは能上演の紹介が多いですね。今年になってから、1月の「忠度」に次いで2回目になります。事務局長のKさんに伺いましたら評判がいいんだそうです。千代田区在勤者には能好きが多いのかもしれません。あるいは、狂言「粟田口」に出演する野村萬斎目当てなのかもしれないな。で、「敦盛」です。私には映画「無法松の一生」で、急死した吉岡大尉の未亡人の息子が学芸会で歌う唱歌「青葉の笛」の一番(敦盛が主人公)が思い出されます(ちなみに二番はNEWS152号でご紹介した忠度が主人公)。
〽一の谷の軍(いくさ)破れ討たれし平家の公達あわれ・・・
源氏の総大将・源義経の奇襲作戦「鵯越(ひよどりごえ)の逆落し」により総崩れとなった平氏の兵たちは一の谷の沖合に浮かぶ軍船に逃げ戻ります。その中に、錦の袋に入れた名管「さ枝」を腰にさして騎馬で沖へ向かう笛の名手・平敦盛(たいらのあつもり)がいました。そこへ「敵にうしろをみせさせ給ふものかな かへさせ給へ」と大声で叫ぶ源氏方の武将・熊谷直実(くまがいなおざね)。その声に応じて敦盛は取って返します。そして、一騎打ちに。しかし、千軍万馬の関東の荒武者・直実にまだ16歳の少年が敵うはずもなく組み敷かれてしまいます。直実が敵将の兜を取ってみると・・・なんと!自分の息子と同い年くらいの薄化粧をした紅顔の美少年ではありませんか。この若者を討ったなら父親はさぞ嘆くだろう。すでにこの一戦は勝ち戦、この若者を逃したとて負け戦になるわけでなし助けよう。しかし後ろを振り返れば味方の軍勢が迫ってきます。逃すことはできない。ならば己の手にかけて後々のご供養をしましょうと語る直実に「ただとくとく頸をとれ」と言い放つ敦盛。やむなく直実は前後不覚になりながら泣く泣く首を掻き切ります。このことにより直実は出家してしまうのですが、平家物語でも有名なこのエピソードはのちにさまざまな作品を生むことになります。桶狭間の戦いの前夜、織田信長が舞う「〽人間五十年下天のうちをくらぶれば夢幻の如くなり・・・」で知られる幸若舞「敦盛」。文楽、歌舞伎の「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」。そして、能の「敦盛」です。敦盛の菩提を弔うため出家した直実は一の谷にやってきます。そこで出会ったのは敦盛の霊。敵同士であった二人の間になにが起こるのでしょうか。それは・・・観なくちゃわかりませんね。さあ、梅雨に入る前に千駄ヶ谷の国立能楽堂にゆきましょう。
「獅子はわが子を千尋の谷に落とす」とゆうことわざがあります。かわゆいわが子の力を試すため谷底に蹴り落とし、這い上がってくる子獅子のみを育てるんだそうです。そんな中国の伝説を基にした歌舞伎舞踊が隼町の国立劇場で上演されます。平成30年6月歌舞伎鑑賞教室「連獅子」〈プログラム・解説のしおり付き〉です。原典は能の「石橋(しゃっきょう)」。獅子が登場する能だそうですが、私、詳しくないのでここは割愛させていただきます。で、「連獅子」です。能舞台を模した松を背景とする舞台に登場するは、狂言師右近のちに親獅子の精と狂言師左近のちに小獅子の精。演じるは三代目中村又五郎と四代目中村歌昇。親子で親子を演じます。筋は・・・これも大幅に割愛して、イチバンの見どころは、白毛の親獅子と赤毛の小獅子が背丈より長い長~い毛(インド北部、チベットなどの高地にいる牛の仲間ヤクの毛なんだそうです)を振って踊る毛振りのシーンでしょうね。私、「連獅子」をまともに観たことがありません。今回はゼヒとも観たいものだとおもっています。なんども書いていますが、この鑑賞教室はハズレがありません。若手歌舞伎役者が歌舞伎の基礎知識を演技も交えて懇切丁寧に教えてくれます。昨年の今ごろ、歌舞伎十八番の内「毛抜」を観ましたが、このとき解説を務めたのが二代目中村錦之助の長男・中村隼人。なかなかの二枚目ですよ。この「連獅子」では幕間に演じられる間狂言(あいきょうげん)で浄土宗の僧を演じます。さらに。7年前の歌舞伎鑑賞教室では義経千本桜の「渡海屋(とかいや)の場」と「大物浦(だいもつのうら)の場」が上演されました。このとき解説したのが今や人気絶頂の尾上松也だったんです。今回の解説は十代目坂東三津五郎の長男・二代目坂東巳之助。若手ホープの登竜門(となっているのか)歌舞伎鑑賞教室でどんな解説をしてくれるのか、これもタノシミですね。
今月号も話題満載ゆとりちよだでありました。アキバのみなさまには・・・ゆとりちょだNEWS初登場、神田の上条さんがお持ちになりました。おタノシミに。